労務業務にAIやRAGを導入する際、最も重要で、かつ失敗しやすいポイントがあります。
それは、「すべての労務問い合わせを自動化しようとしてしまうこと」
です。
労務の質問には、
- 自動化すべきもの
- 人が判断すべきもの
が明確に存在します。
本記事では、社員からの労務関連質問を自動化レベル1~5 に分類する考え方を解説し、「どこまでAIに任せてよいのか」「どこから人が対応すべきか」を整理します。
なぜ「自動化レベル定義」が必要なのか
労務分野では、誤回答がそのまま
- 労務トラブル
- 法的リスク
- 社員の不信感
につながります。
そのため、AI活用において重要なのは精度の高さよりも、適切な役割分担です。
自動化レベルを定義することで、
- 過剰なAI依存を防げる
- リスク領域を人に残せる
- 現場が安心してAIを使える
という効果があります。


労務問い合わせの自動化レベル定義(1~5)
レベル1:AI完全自動回答(最も安全·効果大)
特徴
- 定型的
- 判断を伴わない
- ルールが明文化されている
質問例
- 有給休暇は何日付与されますか?
- 勤怠修正はどこから申請しますか?
- フレックスタイムのコアタイムは何時ですか?
AIが就業規則·規程·システムマニュアルを参照して即答可能
レベル2:AI一次回答+人の最終確認
特徴
- 基本ルールは明確
- 例外が存在する
- 人の確認があると安心
質問例
- 有給は時間単位で取得できますか?
- 振替休日と代休の違いは何ですか?
- 在宅勤務時の残業申請はどうなりますか?
AIが回答案を出し、人が必要に応じて確認·補足
レベル3:判断材料の整理(最終判断は人)
特徴
- 法的リスクを含む
- ケースごとの判断が必要
- AIは「整理役」に徹する
質問例
- 長期休職者はいつ復職させるべきですか?
- 問題行動がある社員を懲戒処分できますか?
- ハラスメントに該当しますか?
AIは関連規程・法令・過去事例を整理するだけ
レベル4:人による対応が必須(AIは一次受付のみ)
特徴
- 高い法的リスク
- 企業の方針判断が必要
- AIが答えるべきではない
質問例
- 解雇して問題ありませんか?
- 労基署から是正勧告を受けました
- 労災申請を拒否できますか?
AIは「相談窓口案内」「必要情報整理」のみ
レベル5:極めて慎重な対応が必要(AI回答不可)
特徴
- 人の感情・メンタルが関係
- 二次被害リスクが高い
- 専門家対応が前提
質問例
- 上司からのハラスメントで精神的に限界です
- うつ病と診断されました
- 職場で孤立しています
AIは共感的な一次案内のみ、人・専門家につなぐ
自動化の「正解」はレベル3まで
実務検証から言える結論は明確です。
労務問い合わせの自動化は、レベル3までで十分に効果が出る多くの企業では、
- レベル1~2:全体の50~60%
- レベル3:20~30%
を占めており、ここをRAGでカバーするだけで、労務工数は大幅に削減されます。
自動化レベル定義は「安心してAIを使うためのルール」
このレベル定義は、
- AIを縛るためのルールではありません。
- 人が安心してAIを使うためのガイドラインです。
特に労務分野では、
「AIが何をしないか」を決めることが「AIを使えるようにする第一歩」になります。
まとめ
労務関連の社員からの質問は、
- すべてAIに任せるべきでも
- すべて人が対応すべきでもありません。
自動化レベル1〜5を定義し、
レベル3までをAIが支援、
レベル4・5は人と専門家が対応する
この役割分担こそが、
労務RAGを成功させる現実的なアプローチです。
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